瓦の漆喰(しっくい)もメンテナンスが必要?漆喰の役割や補修工事のポイントについて解説

瓦と密接な関係がある漆喰には、雨水や小動物の侵入防止など、さまざまな役割があります。
しかし、漆喰には瓦ほどの耐久性がなく、定期的に漆喰のメンテナンスを行わなければ、雨漏りのリスクが高まります。
本記事では、漆喰の役割や2種類の補修工事と、工事のポイントをご紹介します。
火災保険の活用についても取り上げますので、瓦屋根の工事を検討する際には参考にしてください。
漆喰とは古くから活用されている塗り材
漆喰は、約5000年も前から世界で活用されている塗り材です。
瓦や石材の接着、壁の上塗りなど、現代でもさまざまな場面で使われています。
漆喰の主な原料は、石灰石に水を加えた水酸化カルシウムです。
さらに、布海苔(ふのり)やスサと呼ばれる麻の繊維などを混ぜて作られています。
漆喰の役割は雨水や小動物の侵入防止

漆喰の役割は、屋根の頂上の棟部分で瓦と瓦の隙間を埋めることで、葺き土の流出と雨水の浸入を防ぐことです。
隙間を漆喰が埋めていれば、雨水だけでなく小動物の浸入も防ぐことができます。
また、瓦同士を接着し、風や揺れで瓦がズレたり、落下するのを防止する役割も漆喰にはあります。
さらに、瓦のズレを防止して並びをキレイに保つだけでなく、瓦の隙間を白い漆喰で埋めることで屋根のデザインとしての美しさも生み出します。
漆喰は隙間を埋めて雨水の侵入を防ぎ、瓦の固定や美観を保つ役割を持ちながら、住まいを長持ちさせてくれます。
漆喰は雨風や日光で劣化

次に、漆喰の劣化についてご紹介します。
漆喰は瓦と比べると耐久性が低く、雨風や日光などの影響で劣化します。
例えば、10年程度を経過すると漆喰にひび割れが見られるようになります。
20年程度を経過すると、漆喰に欠けや剥がれが発生することがあり、屋根に雨水が浸入する場合もあります。
また、欠けた漆喰が雨どいに詰まって水の通りを悪くする可能性もあります。
漆喰の劣化は、台風や地震などで瓦のズレや落下も発生しやすくなり危険なので、定期的な補修工事を検討しましょう。
漆喰が劣化したときに行われる2種類の補修工事

続いて、漆喰の補修工事を2種類ご紹介します。
主に、以下の2つです。
①漆喰の詰め直し
②棟の取り直し
それぞれ解説します。
①:漆喰の詰め直し
漆喰の劣化がひび割れや軽い剥がれ程度の場合は、漆喰の詰め直しで補修を行います。
漆喰の詰め直しでは、最初に既存の古い漆喰を取り除き、清掃します。
上から新しい漆喰を重ね塗りすれば既存の漆喰を取り除く手間が省けますが、重ね塗りは密着性が悪く剥がれやすくなるため、古い漆喰を取り除くことが必要です。
古い漆喰を取り除いた後は、葺き土を整えて新しい漆喰を詰めていきます。
均一に隙間なく詰めて、表面を整えるのがポイントです。
狭い部分まで漆喰を詰める作業は職人の技術が重要になります。
戸建て住宅の一般的な詰め直しの工期は1〜3日程度で、足場代を含めると10万〜30万円が相場です。
②:棟の取り直し
漆喰の剥がれが酷く、棟のゆがみや雨漏りなどが生じているケースでは、棟の取り直しで補修を行います。
棟の取り直しでは、まず棟の部材の状態を確認して、既存の棟瓦や葺き土を撤去する作業が必要です。
撤去した瓦に割れや欠けがあり、雨漏りを引き起こす可能性が見受けられる場合は、交換をします。
撤去と補修の後は新しい葺き土を敷き、撤去したのし瓦や冠瓦を戻し、漆喰を施工していきます。
棟の取り直しの工期は3〜7日程度で、20万〜60万円が相場です。
漆喰の補修工事を行うときの3つのポイント

さらに、漆喰の補修工事を検討する際の3つの注意点をご紹介します。
①:漆喰の剥がれですぐに雨漏りするわけではない
②:工事費用が高くなるケースがある
③:DIYでの補修は推奨されていない
それぞれ解説します。
①:漆喰の剥がれですぐに雨漏りするわけではない
漆喰が剥がれて白い破片が屋根に散らばっていると、屋根の状態が心配になるのではないでしょうか。
その心配を利用して、早く工事をしないと雨漏りになると通りすがりの業者から指摘されるケースがあります。
とくに、自然災害の後、訪問が増えると言われています。
しかし、漆喰の剥がれがあったとしても、防水紙が雨水をガードするため、すぐに雨漏りが発生するわけではありません。
漆喰の剥がれがあった場合、まずは信頼できる屋根工事の業者に相談して、適切な屋根調査を依頼すると安心です。
慌てて漆喰の上塗り工事契約をしてしまわないように、注意をしましょう。
②:工事費用が高くなるケースがある
漆喰の補修工事では、費用が高くなるケースがあります。
例えば、屋根の形状が複雑な場合です。
屋根の形状で一般的に見られる切妻屋根の屋根は2面ですが、寄棟屋根は4面になります。
ご自宅の屋根がどの屋根かわからない方は、以下の記事をご覧ください。
屋根の形状の違いは?種類別の特徴とメリット・デメリットを解説
屋根の面の数が多くなると、それだけ棟の長さや数が増える傾向にあります。
漆喰の補修工事を行う際に、棟の長さや数が増えれば、工事費用が高くなりやすいでしょう。
屋根の形状が複雑な場合は、業者に見積もりを依頼して費用を確認しておくようにします。
また、劣化した漆喰が雨樋に詰まり、雨樋を破損させる場合もあります。
雨樋は、素材によっては20年程度で劣化をしますので、漆喰補修の際に点検や補修工事をするとよいでしょう。
その場合は工事費用が追加されてしまいます。
③:DIYでの補修はリスクが高い
ホームセンターで漆喰の材料を購入し、DIYで補修をする方法がブログやYouTubeなどで紹介されていることがあります。
「剥がして塗るだけ」という認識で漆喰の補修をDIYで試みるのは、以下のようなリスクが伴うため絶対に避けましょう。推奨されません。
・漆喰の塗り過ぎで盛り上がった部分に雨風が当たってすぐに剥がれてしまうため、劣化の進行が早まる
・屋根の上は高所で足場が不安定になるため、落下事故の危険性がある
・材料以外に工具や足場などを揃える必要があり、コストが意外にかかる
・足の踏み場を間違えて瓦を破損させてしまう可能性がある
漆喰をDIYで補修しようとすると費用が余計にかかり、危険も伴うため、専門の業者に依頼をしましょう。
火災保険の適用例と注意点

瓦や漆喰の補修工事に火災保険を活用する方法があります。
具体的な適用例と注意点をご紹介します。
火災保険の適用例
火災保険は、火災が起きた場合のみに適用される保険というイメージがありますが、火災以外に適用可能なケースがあります。
例えば、自然災害により瓦や漆喰に破損があった場合です。
一般的に火災保険に関係する自然災害は以下の通りです。
・風災
・ひょう災
・落雷
・水災
・雪災
(地震の場合は地震保険の適用範囲)
屋根の中でも一番高い位置にある棟は、とくに台風や強風などの風災による被害を受けやすい部分です。
具体的には、棟瓦が飛んでしまったり、漆喰が剥がれることがあります。
屋根に設置してあるアンテナが壊れ、棟を破損させてしまうケースも見られます。
また、ひょう災で起こる可能性があるのは、屋根にひょうが落ちて雨樋に穴が空いたり、漆喰部分に当たって破損するような被害です。
台風や大雪などの自然災害が起きた結果、瓦や漆喰の工事が必要になった場合は、火災保険の適用を検討します。
さらに、外部からの物体の落下や衝突による破損があった場合も、火災保険を適用できる可能性があります。
例えば、石やボールが屋根に投げ込まれたり、隣のビルから看板が落ちてきて破損したような場合です。
ただし、火災保険の適用範囲は保険の種類によって変わるため、最終的には保険会社の判断になります。
火災保険の注意点
自然災害の中で、地震による被害を受けた場合は火災保険ではなく地震保険の範囲になりますので、注意が必要です。
また、自然災害によって起きた被害であっても、被害を受けてから何年も経過してしまうと経年劣化との違いを判断するのが難しくなります。
そのため、火災保険の申請期間は3年と定められています。
被害を受けた際には損害箇所を複数の角度や方向から写真に撮り、早めに保険会社に連絡をして手続きを行いましょう。
安心して任せられる工事業者に依頼しよう

以上、漆喰の役割や2種類の補修工事と、工事検討の際の注意点をご紹介しました。
火災保険では、工事業者の施工不良による損害は適用されません。
そのため、安心して任せられる工事業者に依頼するのが大切です。
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