屋根の形状の違いは?種類別の特徴とメリット・デメリットを解説
屋根の形状には、一般的なタイプから珍しいものまで多数の種類があります。
そのため、どのタイプを選べば良いのか迷ってしまうのではないでしょうか。
屋根を選ぶ際には、それぞれの特徴や良し悪しを把握しておくことが大切です。
本記事では屋根の形状について、種類別の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
最初に屋根の基本的な役割を取り上げますので、新築や屋根のリフォームなどの際に、参考にしていただけると幸いです。
屋根の基本的な役割
屋根には、以下の基本的な役割があります。
・さまざまな気象条件から建物を守る
・熱の流出や流入を抑制する
・外観にデザイン性を持たせる
屋根は雨風や日光だけでなく、豪雪や台風など厳しい気象条件からも建物を守ってくれます。
また、室内から熱が流出したり、外から流入するのを抑えてくれる役割もあります。
そのため屋根は、空調された室内の空気の温度を留め、冬は温度を逃さず、夏は室温の上昇を最小限に抑えるのに役立つでしょう。
さらに、建物の大部分を占める屋根は、例えば「洋風(和風)の家」「豪華な家」「可愛い家」「シンプルな家」など、家の印象を大きく左右すると言えます。
屋根の形状10種類と特徴やメリット・デメリット
本記事で紹介する屋根の形状は、以下の10種類です。
①切妻屋根(きりづまやね)
②半切妻屋根(はんきりづまやね)
③寄棟屋根(よせむねやね)
④方形屋根(ほうぎょうやね)
⑤片流れ屋根(かたながれやね)
⑥陸屋根(りくやね/ろくやね)
⑦バタフライ屋根
⑧かまぼこ屋根
⑨ギャンブレル屋根
⑩越屋根(こしやね)
それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
①:切妻屋根
切妻屋根は、本を開いて被せたような三角屋根の形状です。
古くから神社や民家などで使われており、日本でなじみのある屋根と言えば切妻屋根でしょう。
メリットはシンプルなつくりで施工も容易なため、コストを抑えられる点です。
また、シンプルな形状は和洋どちらのデザインにも合いやすく、水はけも良いため、雨漏りのリスクを減らせます。
さらに、屋根裏のスペースを広く取れるため通気性が良く、屋根面は太陽光パネルを設置しやすいフラットな形状です。
デメリットは、雨や直射日光などの影響を受けて劣化しやすい点です。
影響を受ける部分としては、以下3つが挙げられます。
・大棟(屋根と屋根が接している頂上部分)
・妻側(大棟に直角に当たる壁面)
・破風(妻側の上部にあり、屋根の左右両端部分)
屋根の素材によっては、雨水が浸透することによる腐敗、紫外線による割れ、温度変化による亀裂などが発生する可能性があります。
②:半切妻屋根
半切妻屋根は「はかま腰屋根」「ドイツ屋根」とも呼ばれ、切妻屋根の上端部を斜めに切り取った形状の屋根です。
メリットは、建築基準法で斜線制限がある場合に、室内面積を変えずに高さを調整して建てられる点です。
デメリットは、斜めに切り取った上端部に小さな三角形の屋根面が生まれるため、構造が複雑になる点です。
複雑になると、屋根面同士や屋根と壁のとりあいが増えるため、雨水が浸入するリスクが高まります。
そのため、半切妻屋根は他の形状よりも、屋根の状態をこまめにチェックすると良いでしょう。
③:寄棟屋根
寄棟屋根は中央の頂点に大棟があり、三角形の2面と台形の2面で構成された屋根です。
切妻屋根同様に、古くから使われている形状の1つになります。
メリットは、屋根面が4つになるため安定感があり、耐風性に優れている点です。
また、4面ともに軒を出しやすいため、雨や直射日光から外壁を守ることができます。
さらに、劣化しやすい破風がなく、雨漏りのリスクを減らすことが可能でトラブルが少ない形状と言われています。
しかし、寄棟屋根は大棟に加えて、屋根面が接する部分に4本の下り棟があります。
デメリットは、棟が多いため、使用されている部材の浮きや緩みなどから雨水が浸入するリスクが高くなる点です。
屋根裏のスペースが取りにくく、通気性も劣ります。
寄棟屋根は、近年では減少傾向にあります。1面あたりの屋根面積が狭いため、太陽光パネルを設置しにくい形状というのも一因でしょう。
④:方形屋根
方形屋根は、ピラミッドのような形状の屋根です。
寄棟屋根にある大棟が方形屋根にはなく、4面全ての屋根面が三角形になります。
メリットは、棟が少ない分、寄棟屋根より雨漏りのリスクが減る点です。
また、雨水を屋根の傾斜に沿って流すことができるため水はけが良く、雪も4方向に分散できます。
デメリットは、建物が正方形に近い場合に限られるという点です。
4面全ての屋根面が三角形のため、太陽光パネルが設置しにくいのは寄棟屋根と同様です。
⑤:片流れ屋根
片流れ屋根は、1面だけが片側に傾斜している形状の屋根です。
シンプルでシャープな印象があり、近年では人気の形状となっています。
メリットは、屋根面積が広く、太陽光パネルを設置しやすい点です。
また、屋根裏のスペースを広く取りやすく、高い位置に窓を設置できるため部屋が明るくなります。
さらに、屋根が1面だけで構成されており、雨どいの数が最小限で済むため、コストを抑えられます。
デメリットは、雨水や雪が片側に集中してしまう点です。
片側に集中すると雨どいに負担がかかり、外壁や軒先から浸水する場合があるため注意が必要です。
屋根の構造上、軒がない面が多いため、外壁が雨や直射日光の影響を受けやすくなります。
片流れ屋根は省スペースで住宅密集地にも適していますが、雨漏り対策を充分に行っておく必要があります。
⑥:陸屋根
陸屋根は「平屋根」「フラットルーフ」とも呼ばれ、1面が水平になっている屋根です。(完全な水平ではなく最低限の水勾配があります。)
ビルやマンションだけでなく、木造の住宅でも多数見られます。
メリットは、屋根を屋上空間として活用できる点です。
ルーフバルコニーとして使用したり、洗濯物を干す場所にもなります。
また、屋根がフラットなので、足場などが不要でメンテナンスがしやすいのも特徴です。
デメリットは、雨水が留まりやすいため、定期的な防水メンテナンスを行わなければ雨漏りのリスクが高くなる点です。
陸屋根はフラットな形状のため、太陽光パネルを斜めに設置するための架台が必要になります。
そのため、パネルの設置時にコストがかかる傾向にあります。
陸屋根はモダンなデザインの住宅にすることができますが、排水については注意が必要でしょう。
⑦:バタフライ屋根
バタフライ屋根は「Y型屋根」とも呼ばれ、端が高く中央が低い、谷のような形状の屋根です。
一般的な住宅の屋根には珍しく、個性的な外観となります。
メリットは、バタフライの形状を活かして、降雪地帯で無落雪屋根となる点です。
無落雪屋根は、屋根に積もった雪を電熱器で溶かし、中央の谷に集めて排水します。
そのため、雪下ろしの手間を省き、落雪事故を防ぐことが可能です。
デメリットは、雨漏りのリスクが高く、排水のメンテナンスが欠かせない点です。
降雪地帯では雪を屋根に留めておくため、雪の重さに耐えられる強度が必要で、その分コストが高くなります。
バタフライ屋根は無落雪式の屋根形状ですが、排水処理には注意しましょう。
⑧:かまぼこ屋根
かまぼこ屋根は「ヴォールト屋根」とも呼ばれ、かまぼこのような半円の形状の屋根です。
体育館や倉庫などの大きな建物で見られますが、戸建て住宅で用いられることもあります。
メリットは、美しい屋根面を外観で表現しやすい点です。
また、屋根裏のスペースを広く取りやすい上に、強度が高いことも特徴です。
デメリットは、半円の形状のため、架構や下地の施工に手間がかかり、コストが高くなる点です。
かまぼこ屋根は、長いスパンも実現しやすく柱を減らすことができますが、コスト面の検討が必要です。
⑨:ギャンブレル屋根
ギャンブレル屋根は「腰折れ屋根」「駒形切妻屋根」とも呼ばれ、屋根面の傾斜角度が途中で変わる形状の屋根です。
メリットは、勾配を途中で変えることで、狭い土地や斜線規制などの中でも広い屋根裏空間を設けることができる点です。
また、ギャンブレル屋根は牧場やログハウスなどに見られる形状で、一般の住宅には珍しいため、個性的なデザインで差別化することも可能です。
デメリットは、構造が複雑になるため、とくに傾斜が変わる箇所の雨漏りリスクが高まる点です。
ギャンブレル屋根は個性的なデザインの屋根ですが、太陽光パネルを設置する面積は狭くなるので、メリットとデメリットの比較検討が大切です。
⑩:越屋根
越屋根は、棟をまたいで小さな2階部分を載せたような形状の屋根です。
屋根の上に小さな屋根があるように見える越屋根は、大きな古民家で採用されていたもので、一般の住宅では少ないでしょう。
メリットは、小さな小屋の部分に窓を設置できるため通気性が良く、採光しやすい点です。
デメリットは、複雑な構造になるため、メンテナンスやリフォームのコストが高くなる点です。
和風建築で採用されやすい越屋根は、通気や採光に優れている反面、雨漏りのリスクもある屋根と言えるでしょう。
屋根の選択に迷う場合は施工者や設計者に相談しよう
以上、屋根の形状について、種類別の特徴やメリット・デメリットをご紹介しました。
それぞれの特徴を知っていても、ご自宅の屋根にどれを選択すれば良いのか迷うことがあるのではないでしょうか。
専門の業者に相談すれば、最適な屋根を選ぶことが可能です。
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