瓦屋根の構造や3つの特徴とは?耐震性を高めるポイントについて解説
瓦屋根は、常に瓦が屋根を覆っている状態なため、普段から内部の構造が見られるわけではありません。
自然災害や経年劣化などで突然の不具合が屋根に発生した際に、初めて瓦屋根の構造を意識することが多いのではないでしょうか。
しかし、瓦屋根の基本的な構造を知っていないと、工事の際に理解できず戸惑ってしまいます。
本記事では、瓦屋根の構造や特徴をご紹介します。
耐震性を高めるポイントも取り上げますので、不具合発生時や工事の際に慌てないように、瓦屋根の構造を知っておきましょう。
瓦屋根の構造
最初に、瓦屋根の構造をご紹介します。
瓦屋根を構成する主な部位は、以下の5つです。
①②③④は部材とも呼ばれます。
①垂木(たるき)
②野地板(のじいた)
③防水紙
④屋根材
⑤棟(むね)
それぞれ解説します。
①:垂木
垂木は、母屋の頂上に水平に渡された棟木(むなぎ)から、屋根の傾斜に沿って下へ垂らすように取り付けられている部材のことです。
一般的には45.5cm間隔で何本も横並びにしますが、強度を高めるために1尺(30.3cm)などの短い間隔で取り付けられているケースもあります。
垂木のサイズは、瓦屋根の場合、スレートや金属屋根よりも重いため、幅6.0cm、高さ7.5cmの垂木が用いられるのが一般的です。軒の出が長い場合は幅6.0cm、高さ9.0~10.5cmと、更に厚みを増した垂木が使用されます。
また、屋根面の重さを支える重要な部材で、家全体の強度を上げる働きもあります。
②:野地板
野地板は、垂木の上に設置する板状の部材です。
厚さは9mm〜15mmが一般的ですが、重い屋根材や太陽光パネルを載せる場合は、12mm以上が厚みのものが用いられることが多いです。大きさは縦が90mm〜180mm、横が1820mm〜2000mmの構造用合板、杉バラ板、耐火野地板が用いられます。
垂木に固定して平な面を提供し、後述の防水紙や屋根材を設置する土台となる部分です。
また、防水紙や屋根材に不具合が発生した場合は、屋根の表面に近い野地板が雨漏りの被害を受けやすくなります。
野地板は目視で状態を確認することはできず、耐用年数が20〜30年程度です。
そのため、葺き替えや葺き直しのタイミングで、野地板のメンテナンスをするようにしましょう。
③:防水紙
防水紙は、ルーフィングとも呼ばれ、野地板の上に設置するシート状の部材です。
防水紙には、屋根からの雨漏りを防ぐ最も重要な役割があります。
例えば、屋根材のズレや破損があっても、防水紙の機能に問題がなければ雨漏りの発生確率は低くなります。
そのため、雨漏りが発生している場合は、防水紙が傷んでいる可能性が高くなります。
また、防水紙の寿命は、種類によって10〜50年程度と幅があります。
防水紙を選ぶ際は、高性能なだけでなく屋根材の寿命に近いものを選ぶと、メンテナンスがしやすくなるためおすすめです。
④:屋根材
屋根材は、防水紙の上に設置する屋根の一番表面となる部材です。
瓦屋根では、瓦が屋根材になります。
雨風や日光などから建物を守り、温度や気候の変動に耐えうる耐久性が屋根材には求められます。
屋根材の中でも瓦が最も耐久性が高く、30年経っても美しさを保つことが可能です。50年を超えて使用できるものも存在します。
また、屋根の一番表面に設置される屋根材は、建物全体のイメージを決めるほど外観に与える影響が強い部分と言えます。
⑤:棟
棟は、屋根の頂上や軒先に降りてきている箇所にあり、屋根の面と面が交わる部分のことです。
頂上部分は大棟と呼ばれ、軒先に降りてきている箇所は隅棟や下り棟と呼ばれます。
和瓦屋根では一般的に、棟の土台部分に土を詰めて漆喰で周りを固め、のし瓦と棟瓦を積みます。
洋瓦屋根では、のし瓦を用いないで施工しますが、最近では和瓦屋根でも同様の方法で棟を積むケースがあります。
以上の瓦屋根の構造を踏まえて、特徴を確認していきましょう。
瓦屋根の3つの特徴
次に、瓦屋根の特徴を3つご紹介します。
①空気層による断熱効果が高い
②寿命が長い
③メンテナンスの手間が少ない
それぞれ解説します。
①:空気層による断熱効果が高い
瓦屋根には、瓦と野地板の間に空気が通り抜ける隙間があります。
屋根材と野地板の間に空気層があると断熱効果が働き、室内に流入する日光の熱量を減らすことができます。
そのため、瓦屋根は構造上、断熱効果が高くなる特徴があります。
また、瓦自体の厚みが、屋根の表面から室内に伝わる熱を減らす効果もあります。
スレート屋根の場合は基本的には野地板との間に空気層がなく、屋根材も厚くないため瓦屋根より断熱効果が低くなります。
②:寿命が長い
瓦屋根は、屋根材に瓦を使用しています。
瓦は土を焼き固めて作る陶器素材のものなので、瓦屋根には耐久性が高いという特徴があります。
しかし、防水紙や野地板の耐久性は瓦と比べると低いため、適切なメンテナンスが必要です。メンテナンスを怠らなければ、瓦屋根の寿命の長さを活かすことができるでしょう。
③:メンテナンスの手間が少ない
瓦屋根は、屋根材である瓦の耐久性が高いことに加え、定期的な塗装が必要ないためメンテナンスの手間が少なく済みます。
また万が一、自然災害によって瓦にひび割れや破損が発生した場合でも、部分的に瓦を差し替えて対応することができます。
しかし、先述の通り瓦屋根だからメンテナンスが必要ないというわけではありません。
瓦屋根は屋根材の瓦以外に、防水紙や漆喰などの副資材も使用されています。
瓦に問題がなくても、副資材のメンテナンスは必要になることがあります。
以上のように、高い断熱効果や長寿命、メンテナンスの手間が最小限という点が、瓦屋根の特徴です。
瓦屋根の耐震性を高める3つのポイント
最後に、瓦屋根の耐震性を高めるポイントを3つご紹介します。
屋根が軽ければ、地震の際に建物の揺れが小さくなると言われています。
瓦は他の屋根材よりも重量があり、瓦屋根は重くなることが多いため、建物の重心が高くなりがちです。
重心の高い建物は、地震で大きく揺れやすく柱や壁などに負荷がかかってしまいます。
しかし、瓦屋根は全て耐震性が低いというわけではありません。
建物の耐震性能に最も影響があるのは、屋根材の重量に見合った躯体の強度があるかどうかです。
以上の点を踏まえて、瓦屋根の耐震性を高めるポイントは次の通りです。
①建物の耐震補強をする
②新耐震基準を満たす
③ガイドライン工法を取り入れる
それぞれ解説します。
①:建物の耐震補強をする
築30年程度の建物に震度7レベルの揺れを与えて、耐震補強の有無で被害状況を比較した実験があります。
それによると、耐震補強のない建物は激しく倒壊し、補強を施した建物は壁の一部が崩落した程度で、倒壊はしませんでした。
建物の耐震性能を上げるには、壁の筋交いや補強用面材による壁の補強を施すなど、耐震補強が有効手段の1つです。
②:新耐震基準を満たす
日本では耐震基準が定められているため、屋根材の重量に見合った充分な強度がある躯体で建てられるのが基本です。
1981年に施行された新耐震基準では、震度6強〜7程度の揺れでも倒壊しないことを基準にしています。
そのため、1981年より前の建物は現在の耐震基準を満たしていない可能性がありますので、業者に診断をしてもらうと良いでしょう。
また、1995年の阪神・淡路大震災で木造住宅が多数倒壊したため、木造を対象に耐震基準をより厳しくした「2000年基準」もあります。
今後も耐震基準は改正されていくと予想されますので、確認しておくと安心です。
③:ガイドライン工法を取り入れる
台風や地震で、屋根の瓦がズレたり落下するケースがありますが、これらは施工方法が古い瓦屋根で起こりやすい現象です。これらについても、ガイドライン工法と呼ばれる方法であれば被害を抑えることが可能です。
新築の場合は2022年から、ガイドライン工法により瓦を屋根に留付ける基準が強化されています。
具体的には、全ての瓦をねじやくぎなどで屋根に固定することが義務化されました。
そのため、古い工法で建てられた瓦屋根の場合は、ガイドライン工法へ葺き替えか葺き直しを行うと自然災害の対策になるでしょう。
瓦の葺き替えタイミングや葺き替えの重要性については、以下の記事をご覧ください。
瓦の葺き替えはいつ必要?瓦の特性・葺き替えの重要性とポイントを解説
進化した瓦で台風や地震に強い屋根にしよう
以上、瓦屋根の構造や特徴と耐震性を高めるポイントをご紹介しました。
瓦屋根に用いられる瓦は、改良を加えて耐震性や快適性に優れたものが登場しています。
進化した瓦を用いれば、台風や地震に強い屋根にすることができます。
弊社、株式会社鶴弥は明治20年創業の粘土瓦メーカーです。
屋根の重量を最大60%軽量化が可能な「防災瓦」もご紹介しておりますので、以下の紹介ページや、施工事例ページを参考の上、ぜひご相談ください。
鶴弥の防災瓦なら地震も台風も怖くない
施工事例 | 【三州瓦】防災瓦の株式会社鶴弥