瓦の基礎知識

屋根瓦の種類には何がある?使われる場所・特徴・役割を解説

ヒトツチ編集部

日本では、1400年もの間そのまま使われている瓦が存在します。瓦は耐久性が高く、長く使い続けることができる点は魅力の1つと言えます。

そんな瓦をより長く万全に使い続けるためにも、定期的なメンテナンスは重要となってきます。

もし業者にメンテナンスや修理を依頼する際には、屋根の状態を説明する必要があります。
しかし、瓦屋根は使用部分によって、さまざまな種類の瓦が施工されています。

そのため、瓦の種類を理解していないと、的確に屋根の状態を伝えることは難しい場合も多いです。

そこで、本記事では屋根瓦の種類ごとに、使われる場所・特徴・役割などを紹介します。

屋根瓦の種類を理解しておけば、瓦の修理業者との話もスムーズに進みますので、参考にしてください。

屋根瓦は大きく2つに分けられる

社寺仏閣の瓦は、屋根の場所によって使う種類が変わります。

屋根瓦には平面部分に葺かれる「地瓦」「平瓦」と、袖や棟などに用いられる「役瓦」があります。

それぞれ解説します。

瓦の種類と特徴について、形状と製造方法別にこちらの記事でご紹介していますので、ご参照ください。

瓦屋根が選ばれる理由は?種類と特徴を徹底解説

地瓦(じがわら)

地瓦は、屋根の平面部分に葺かれる瓦で、屋根瓦の中で最も多く用いられています。

また、三州瓦や石州瓦、淡路瓦​​など良質で有名な瓦に対して、とくに有名ではない土地で生産された瓦という意味も地瓦にはあります。

洋瓦のスパニッシュ形の場合は、上丸と下丸が地瓦です。

具体的な地瓦として、例えば桟瓦には切り落とし桟瓦や面取り桟瓦、中深桟瓦など多数の種類があります。

後述する役瓦と比べて地瓦はシンプルな形状が多く、量産しやすい瓦となります。

役瓦(やくがわら)

役瓦は、特殊な部分に葺かれる地瓦以外の瓦のことで、役物(やくもの)や道具物(どうぐもの)と呼ばれることがあります。

本記事では、以下の10種類をご紹介します。

①:軒瓦
②:巴瓦
③:袖瓦
④:角瓦
⑤:隅瓦
⑥:掛瓦
⑦:冠瓦
⑧:熨斗瓦
⑨:鬼瓦
⑩:雪止瓦

それぞれ解説します。

①:軒瓦(のきがわら)

軒先に用いられる瓦が「軒瓦」です。
雨どいに雨水を落とす役割があり、屋根を見上げた際にいちばん目に入る位置にある瓦です。

そのため、家紋や絵柄などを入れた凝ったデザインにする場合があります。

また、軒瓦には以下のような種類が挙げられます。

・万十軒(まんじゅうのき)
正面から見て左側に丸い小巴が付いた軒瓦です。万十瓦はポピュラーな種類の1つで、多くの住宅で使用されています。

・京花軒(きょうはなのき)、花剣軒(はなけんのき)​​
万十軒をベースにした形状で、表面に柄が入った軒瓦です。和風のイメージが強いデザインで、寺社仏閣や格式の高い建築物で見られる種類です。

・一文字軒(いちもんじのき)
軒先が真っ直ぐに見える形状で、隙間がないように「すり合わせ」を行うため、手間をかけた高級な屋根に仕上がる軒瓦です。

軒瓦を変えて施工するだけで、軒先のデザインと屋根全体の雰囲気が変わります。

②:巴瓦(ともえがわら)

軒丸瓦(のきまるがわら)のことで、丸瓦の先に巴がある瓦が「巴瓦」です。

巴瓦は、使用部分によって種類が変わります。

例えば、本瓦葺きの丸瓦の軒先や桟瓦の紐丸瓦の軒先で用いられるのは、軒巴瓦です。

棟の先端で袖瓦の接合部に用いられるのは、棟巴瓦です。

また、破風に掛瓦を用いて、棟の接合部に使われる拝巴瓦もあります。​​​​

破風の上を掛瓦葺きする際に用いられるのは、掛巴瓦​​と呼ばれます。

巴瓦は巴紋があることから付けられた名称でしたが、巴紋がない形状も近年では巴瓦と言われます。

③:袖瓦(そでがわら)

切妻屋根や片流れ屋根などの破風部分に使われる瓦が「袖瓦」です。

袖瓦は桟瓦と同じ方向で葺き、袖垂れと言われる垂れ部分が外側になります。

この部分が下地の断面を保護して、屋根の内側に雨水が浸入するのを防ぎます。

また、屋根を見上げて右側が右袖。左側は左袖と呼ばれます。

袖瓦にも以下のような種類があります。

・並袖(なみそで)
最も多く使用されている袖瓦で、美しく真っ直ぐなラインに仕上がります。一文字軒と同様に、すり合わせを行います。

・紐袖(ひもそで)
紐と呼ばれる出っ張りにより、合わせ目を隠すような形状の袖瓦です。紐袖はすり合わせを行わずに、重ねて施工します。

・中付袖(なかつきそで)
外側に一度出っ張り、ヒレがある形状の袖瓦です。段差によって独特の存在感があるデザインになります。

袖瓦が葺かれる破風から壁までの部分が「けらば」ですので、袖瓦は「けらば瓦」とも呼びます。

④:角瓦(かどがわら)

軒と破風が交わる隅の瓦で、軒瓦と袖瓦を一緒にしたものが「角瓦」です。

角瓦は、雨どいが当たるのを防ぐため、先端に切れ込みがあります。

また、袖角瓦とも呼ばれ、一文字角瓦や万十角瓦などの種類があります。

⑤:隅瓦(すみがわら)

寄棟屋根や入母屋屋根などの隅の軒先に使う瓦が「隅瓦」です。

隅瓦の中で、いくつかのパーツに分かれたものを、切隅(きりすみ)と呼びます。

万十切隅瓦や一文字切隅瓦、石持万十切隅瓦​​などの種類があります。

また、一体になった隅瓦は廻隅(まわりすみ)です。別名とんびとも言います。

⑥:掛瓦(かけがわら)

袖瓦を用いない瓦葺き屋根で、箕甲​​(みのこ)部分に葺かれる瓦が「掛瓦」です。

箕甲​​は、切妻屋根や入母屋屋根の破風側で曲線を成している部分です。

掛瓦は箕甲瓦とも呼ばれ、雨水を破風側に流す役割があります。

万十掛瓦や一文字掛瓦、垂剣掛瓦​​などの種類があります。

⑦:冠瓦(かんむりがわら)

棟瓦の一種で、棟の一番高い部分に用いられる瓦が「冠瓦」です。

比較的平たい瓦は衾瓦(ふすまがわら)や伏間瓦と呼ばれ、丸形や山形など背の高い瓦を冠瓦と言われることがあります。​​

また、冠瓦は雁振瓦(がんぶりがわら)とも呼ばれ、棟の頂上からふたをするように設置して雨水の浸入を防いでいます。

冠瓦には、紐丸瓦や丸桟雁振瓦、垂付雁振瓦や箱瓦などの種類があります。​​

⑧:熨斗瓦(のしがわら)

棟部分に葺かれる短冊状の平たい瓦が「熨斗瓦」です。

熨斗瓦は、雨水の浸入を防ぐため、継ぎ目に漆喰を塗りながら数段に積み上げて施工します。

棟積みで熨斗瓦の上に設置されるのが、前述の冠瓦です。

また、棟が高く積み上げられるのは、格式高い屋根にして家の風格を表すと言われていますが、熨斗瓦を用いずに施工する住宅も存在します。

熨斗瓦には、厚熨斗や糸熨斗瓦​​、箱熨斗瓦​​や紐熨斗瓦​​などの種類があります。

⑨:鬼瓦(おにがわら)

棟の端や破風の拝み部分に用いられる瓦が鬼瓦です。

鬼瓦には雨仕舞いの役割以外に、厄除けや装飾などの意味合いもあり、一般的に最も有名な瓦でしょう。

また、鬼瓦は使用部分によって、2種類あります。

棟の端に使用される鬼瓦は切据鬼​​(きりずえおに)で、破風の拝み部分の鬼瓦は足付鬼​​(あしつきおに)です。

さらに、鬼瓦は頭、胴、足の3つの部分に分けられます。

頭には、並型、丸頭型、数珠掛型、カエズ型などがあります。

胴には、火災防止の願いを込めて雲や若葉のデザインが多く用いられています。

足は足付鬼のみにあり、胴の模様から続いているため、雲付や若葉のデザインが主流です。

頭・胴・足の3つを統合して「鬼瓦」と呼び、「覆輪付吹流丸立鬼」や「丸頭型雲付一文字鬼」などの種類があります。

⑩:雪止瓦(ゆきどめがわら)

軒先から3、4段目に設置されることが多く、取っ手のような部分がある瓦が雪止瓦です。

雪止瓦には文字通り、屋根に積もった雪の落雪を防ぎ、雪が滑り落ちる速度を軽減する役割があります。積雪が多い地域では瓦を2段設置する場合もあります。

屋根の景観を損なわずに必要な箇所のみ交換したり、後付けで設置ができるなどのメリットがありますが、適切な施工が行われなかった場合は雨漏りの原因になってしまうデメリットもあります。

屋根瓦の種類を知って業者の説明や見積もりを理解しましょう

以上、屋根瓦の種類をご紹介しました。

修理業者からの説明時には、専門的な名称が使われる場合があります。
その時は理解したつもりでも、後で分からなくなることもあるでしょう。

屋根の修理箇所によっては使用する瓦の種類が異なるため、瓦の種類をある程度知っておくと、修理業者の説明や見積もりなどの理解に役立つのではないでしょうか。

弊社、株式会社鶴弥は明治20年創業の粘土瓦メーカーです。

安心・安全・快適な住まいのために、弊社の防災瓦もご紹介しておりますので、以下の施工事例ページを参考の上、ぜひご相談ください。

施工事例 | 【三州瓦】防災瓦の株式会社鶴弥

寄稿者
ヒトツチ編集部
ヒトツチ編集部
「ヒトツチ」は株式会社 鶴弥が運営するメディアです。古いと思われがちな瓦という建材について、現代の建築家たちがどのように感じ、どのような活用に取り組んでいるのか。寄稿、インタビュー、トークイベントなどの方法で、瓦についての様々な思考を広く共有していきたいと考えています。
「瓦の基礎知識」のカテゴリー内の記事は、瓦メーカー鶴弥と建築設計者の監修のもと制作されています。
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