瓦の基礎知識

淡路瓦の特徴は強度の高さ?種類や住宅に使うメリット、注意点について解説

ヒトツチ編集部

淡路瓦とは、兵庫県淡路島南あわじ市で生産される瓦です。石州瓦、三州瓦とともに三大瓦として知られており、種類も多いので住宅にもよく使われています

淡路瓦は断熱性や遮音性が高いため、快適な住宅づくりにも適した屋根材です。

その他にも、淡路瓦には光熱費の削減や、一枚単位で修理できるのでメンテナンスしやすい面もあります。

淡路瓦は洋風住宅にも使えるので、施主の選択肢を広げるためにも種類や特徴をチェックしておきましょう。

本記事では、淡路瓦の種類や使うときの注意点も解説しますので、屋根材を選ぶときの参考にしてください。

淡路瓦とは三大瓦の一つ

淡路瓦は、兵庫県淡路島南あわじ市で生産される瓦のことです。淡路瓦は石州瓦、三州瓦とともに三大瓦の一つで、南あわじ市は「なめ土」の産出に恵まれています。

南あわじ市で取れるなめ土は鉄分が多いため、きめ細かく発色や色持ちがよいのが特徴です。

色は灰色が中心ですが、制作工程で色をつけられる種類もあり、洋風スタイルの屋根にも違和感なく使用できます。

淡路瓦の歴史は長く、慶長15年(1610年)に、成山城を築城する際、播州瓦の名工である清水理兵衛を呼び寄せ瓦を焼かせたのが始まりです。

淡路瓦ができたのは1610年ですが、淡路島に広まったのは1630年頃と言われています。

誕生から400年弱経った現在でも数千種類もの淡路瓦が作られており、淡路瓦の一つであるいぶし瓦は、全国1位のシェアを誇ります

では、淡路瓦にはどのような種類があるのでしょうか。

主な淡路瓦は3種類

淡路瓦の主な種類は以下の3つです。

①:いぶし瓦
②:陶器瓦
③:窯変瓦

それぞれ解説します。

①:いぶし瓦

いぶし瓦は、淡路瓦の中でも生産量が多く、淡路瓦の代表格とも言われています。

瓦表面に炭素膜を作る「燻化(くんか)」を施したものがいぶし瓦です。

光が当たると白っぽくなる洗練されたデザインが人気で、和風建築だけではなく、洋風建築にも使われています。
年月が経つと色ムラが出て、味わい深い見た目に変化するのが特徴です。

色ムラは出るものの変色はほとんどなく、苔もつきにくいので、メンテナンスの手間を減らしたい方に適した屋根材です。

②:陶器瓦

陶器瓦は、乾燥後に釉薬をかけて焼き上げています。水や汚れがしみこみにくく、割れにも強いことが特徴です。

釉薬によってさまざまな色を表現できます
施主の希望に合わせて、赤や青など洋風住宅にも合うデザインの陶器瓦をつくることも可能です。

③:窯変瓦

窯変瓦とは、釉薬を使わずに焼き具合によって色をつけたものです。

窯に入れて温度によって色を変えているので、茶色ベースで濃淡の異なる瓦ができあがります。
ベースが茶色のため、周辺の緑や住宅になじむ景観を作れるのが魅力です。

温度で色を変えており、色落ちの心配はほぼありません。備前焼と同じ工程で作られているので、芸術的な美しさも感じられるでしょう。

1枚1枚にムラがあり、瓦本来の風合いを楽しめます。

ほかの屋根材については、関連記事「屋根瓦の種類には何がある?使われる場所・特徴・役割を解説」をチェックしてみてください。

以上、淡路瓦の主な種類をご紹介しました。
実際に住宅の屋根に淡路瓦を使う場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

住宅の屋根に淡路瓦を使う5つのメリット

住宅の屋根に淡路瓦を使うメリットとして、3つ挙げられます。

①:耐火性・耐久性が高い
②:防水性・耐寒性が高い
③:断熱性・防音性が高い

それぞれ解説します。

①:耐火性・耐久性が高い

淡路瓦は、最大1000℃の高温で焼きしめられます。
1100℃以上で焼成される三州瓦と比べると低温ですが、高い耐火性を持った瓦です。

火災の際も、ひび割れや変形を起こしにくく、溶解することもありません。

また、有毒なガスが発生するリスクが低いため、避難時や消火活動の安全性、周辺環境や二次災害の防止などにも役立ちます。

さらに、淡路瓦は優れた強度は、桟瓦の曲げ試験でも実証されています

瓦に荷重をかけていき、破壊に至るまでの耐久性を測定した結果、淡路瓦は屋根材に求められるJIS規格値を大きく上回る強度を示しました。

台風などの強風や、地震の揺れ、積雪などの荷重、人が屋根の上を歩く際の衝撃にも耐える頑丈さを備えています。

②:防水性・耐寒性が高い

日本では年間1500〜2000ミリの雨が降るため、屋根材の防水性能は建物の耐久性を左右する重要な要素です。

淡路瓦の表面は、高温で焼成された際に形成されるガラス質の層(いぶし瓦の場合は炭素膜)で覆われています。

雨水が瓦の表面を流れ落ち、屋内に浸水するのを防ぐため、構造材の腐食や劣化を防止する効果も期待できるでしょう。

また、瓦自体の吸水率も低いため、長期間の使用でも水分による変質や劣化が起こりにくいという特徴があります。

屋根材のひび割れは、凍結と融解を繰り返すことで起こりますが、淡路瓦は水分をためこまないため、ひび割れや剥離などの凍害を防ぐことが可能です。

③:断熱性・遮音性が高い

淡路瓦は、断熱性に優れた屋根材です。

瓦を施工すると、瓦と屋根表面の間に空気層ができ、この空気層が断熱材の役割を果たします。

そのため、淡路瓦の屋根の住宅は、外からの冷気を入れにくく、一方で室内の暖房による温熱は逃しにくいのが特徴です。

もちろん、夏場は外からの輻射熱をやわらげ、屋根からの温度上昇を防ぐ役割もあるため、室内を夏は涼しく、冬は暖かく快適な生活環境を保てます。

また、淡路瓦は、遮音性に優れている点も魅力です。

一般的な瓦は、粘土を焼成してつくられており、金属屋根や薄い板状のスレートと比較すると、かなり分厚く重量のある屋根材といえます。

「屋根材が重い」というのはデメリットとして捉えられがちですが、遮音という観点でみると、この重さと厚みが外部の音を遮断し、住まいを騒音や強い雨風の音から保護する強みとなっています。

甲瓦工業の調査によると、1,600Hzの音に対して瓦は0.58、化粧スレートは0.15、ガルバリウム鋼板は0.17と吸音率の高さが分かります。

鉄道が近い場所や都心部ならば、淡路瓦を使用することで静かに生活できるでしょう。

以上のように、淡路瓦は耐久性、防水性、断熱性などの優れた性能をかね備え、日本の気候風土にも適した屋根材といえます。

伝統的な美しさはもちろん、快適な暮らしづくりに最適な瓦といえるでしょう。

住宅の屋根に淡路瓦を使うときの注意点2つ

淡路瓦を使うときは、以下の2つに注意してください。

①:設置にコストがかかる
②:寒冷地では耐久性に注目して選ぶ必要がある

それぞれ解説します。

①:設置にコストがかかる

瓦屋根は、他の屋根材と比べると、設置コストが高めです。

瓦の設置にコストがかかる理由としては、製品価格のちがいはもちろん、「野地板や瓦桟の設置など、瓦屋根完成までの工法が多くて複雑である」こと、「高い専門技術をもった職人に施工を依頼するため人件費がかかる」ことがあげられます。

ただ、瓦は設置コストがかかるものの、耐久性が高く、もちがいいため、メンテナンスの頻度は低く、低コストでの維持が可能です。

そのため、淡路瓦は、初期費用より維持費をおさえたい方におすすめです。

②:寒冷地では耐久性に注目して選ぶ必要がある

一般的に瓦は、寒冷地だと水分が凍って膨張し割れるリスクがあるため、耐久性と耐水性に注目して選ぶ必要があります。

低い温度でも割れない耐寒性をもつ淡路瓦ですが、より寒冷地に適した種類を選ぶと割れるリスクを減らせます

以上、住宅の屋根に淡路瓦を使うときの注意点を解説しました。

3種類の淡路瓦は日本の住宅に適した屋根材

淡路瓦がもつ保温保湿効果や高い耐久性は、現代の住宅に最適です。

設置にコストはかかりますが、金属やスレートよりもメンテナンスの頻度を抑えられるのが魅力でしょう。

陶器そのものを温度や釉薬によって色を変えているため、色落ちの心配もありません。

万が一破損しても、1枚単位で取り替えられるため、大規模な修繕工事をせずに手入れできます。
ただし、寒冷地の住宅に設置する場合は、耐久性や耐水性を確認するようにしましょう。

弊社、株式会社鶴弥は明治20年創業の粘土瓦メーカーです。瓦を専門に扱っており、住宅タイプに合わせた提案が可能なので、自社で瓦を使いたい場合は、株式会社鶴弥にてご相談を承ります。

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寄稿者
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「ヒトツチ」は株式会社 鶴弥が運営するメディアです。古いと思われがちな瓦という建材について、現代の建築家たちがどのように感じ、どのような活用に取り組んでいるのか。寄稿、インタビュー、トークイベントなどの方法で、瓦についての様々な思考を広く共有していきたいと考えています。
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