瓦の基礎知識

瓦屋根の修理前に知っておきたい「劣化の影響・原因・点検」について解説

ヒトツチ編集部

自宅が瓦屋根の場合、雨漏りがあって初めて不具合に気づき、
以下のような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

「瓦屋根が劣化したのであれば、どのような影響があるのか。原因は何か」
「定期的に点検をした方がいいのか」
「点検はどのように行ったらいいのか」

そこで本記事では、瓦屋根の修理前に知っておきたい劣化の影響や原因、点検についてご紹介します。

瓦屋根の劣化による2つの影響

最初に、瓦屋根の劣化による影響をご紹介します。

主に、以下の2つがあります。

①:雨漏りが発生する
②:建物の強度が落ちる

それぞれ解説します。

①:雨漏りが発生する

自然災害で瓦がズレたり物が飛んできて瓦に当たると、欠けや割れが発生し、瓦の下の防水紙が露出する可能性があります。

露出した防水紙に雨水が当たると防水紙が傷んで劣化し、防ぎきれなくなった雨水が屋根の内部に浸入し、結果的に雨漏りのリスクが高まります。

また、屋根と屋根が接する谷部や、屋根と壁の取り合い部などには谷樋が施工されています。

板金は劣化すると錆びて谷樋を貫通してしまうことがあり、貫通した穴から雨水が浸入して雨漏りにつながります。

以上のような瓦屋根の劣化による影響により、雨漏りが発生する恐れがあります。

②:建物の強度が落ちる

木材は、水分や湿気によって腐敗することがあります。

そのため、雨漏りが発生して何年も放置していると、建物に使われている木材が腐って弱くなります。

例えば、瓦屋根では下地となる野地板が水分を含んでカビが発生したり、腐敗する可能性があるかもしれません。

屋根や柱などに使われている木材が劣化すると、建物全体の強度が落ちてしまいます。

建物の強度が落ちると、台風や地震など自然災害の影響を受けやすくなり危険ですので、注意が必要です。

瓦屋根の構造については、以下の記事をご参照ください。

瓦の葺き替えはいつ必要?瓦の特性・葺き替えの重要性とポイントを解説

瓦屋根が劣化する3つの原因

次に、瓦屋根の状態が変化する原因を3つご紹介します。

①:経年変化
②:自然災害
③:藻やカビ

それぞれ解説します。

①:経年変化

1つ目の原因は、経年変化です。

屋根は建物を雨風や直射日光などから守るため、常にさらされている状態です。

時間の経過で徐々に瓦屋根は経年変化していきます。

粘土瓦は耐用年数が長く、基本的にメンテナンスも不要で色落ちが少ない屋根材です。

しかし、年月を経ることで、立地条件によっては汚れが発生する可能性があるため、気になる場合は水で洗浄をしましょう。

さらに年数が経つと漆喰の剥がれや雨どいの破損などが発生する可能性も出てくるため、年数が経った瓦屋根は定期的に状態をチェックしておくようにしましょう。

瓦屋根の状態をチェックする方法はこちらで取り上げていますので、ご参照ください。

瓦屋根を修理する時の注意点とは?費用相場や補助金も紹介

②:自然災害

2つ目の原因は、自然災害です。

現在の瓦屋根は耐久性が向上しており、基本的には地震や台風の影響を受けても問題はありません。

しかし、瓦屋根が古い場合や自然災害の大きさによっては、瓦屋根が劣化してしまう可能性もあります。

例えば、瓦が台風や地震でズレることがあります。棟に使われている「のし瓦」がズレて、棟の内部に雨水が浸入するケースもあるでしょう。

また、台風による強風で物が飛んできて瓦屋根に当たる場合や、地震で瓦が落下するような被害もありえます。

台風や地震など大きな自然災害の影響を受けた後は、屋根の点検を検討しましょう。

③:藻やカビ

3つ目の原因は、藻やカビです。

藻やカビは湿気が多く暗い場所を好みます。そのため、日当たりの悪い建物の屋根に藻やカビが発生することがあります。

屋根の形状によっては水はけがよくない場合があり、特に藻やカビが発生しやすい環境となってしまいます。

対処法として、基本的に中性洗剤を薄めてスポンジやブラシで優しくこすることや高圧洗浄で洗い流す方法が有効ですが、屋根は高所作業となり危険を伴うため、専門の業者に依頼しましょう。

以上3つのような原因による瓦屋根の状態変化に対処するためにも、定期的な点検は重要です。

瓦屋根の点検に用いられる4つの調査方法

瓦屋根の点検に用いられる調査方法を紹介する前に、定期的な点検を行うメリットについて説明します。

瓦屋根に何らかの不具合が起きても、実際に被害が発生してからトラブルに気づき、修理を検討する場合も少なくありません。

そのため、定期的に瓦屋根の状態を点検しておくと、不具合の早期発見につながり、大きな問題を未然に防ぐことができるでしょう。

また、不具合に早く対処することができれば、結果的に修理コストを抑えられるというメリットがあります。
では、瓦屋根の点検に用いられる4つの調査方法を紹介します。

①:目視調査
②:ドローン調査
③:散水・発光液調査
④:サーモグラフィー調査

①:目視調査

目視調査は、屋根材を剥がさずに屋根の上から調査する方法です。

目に見える範囲での調査になるため、瓦屋根の内部まで直接の点検はできません。

瓦のヒビや割れ、藻やカビなどの有無を調査して、見える範囲から屋根内部の状態を予測します。

また、屋根の形や勾配によって登るのが難しい場合は足場が必要になりますので、足場費用がかかります。

まだ雨漏りが発生していない段階でも目視調査は実施可能なため、不安のある方は業者に依頼して確認してみると良いでしょう。

②:ドローン調査

ドローン調査は、屋根の上にドローンを飛ばして撮影する調査の方法です。

足場を組んで瓦屋根に登る必要がないため、ドローン調査には点検費用を抑えられるメリットがあります。

また、点検で屋根材を傷めることがなく、作業員の安全性も確保することができます。

しかし、空港の近くや住宅密集地など、ドローンを飛ばすことができない場所が定められていますので、どこでもドローン調査ができるわけではありません。

ドローン調査はメリットとデメリットがありますので、事前に確認しておくと安心です。

③:散水・発光液調査

散水調査は、雨漏りが発生していると想定できる箇所に水を流して原因を調査する方法です。

ホースや散水装置などを用いて調査するため、水道代がかかります。

また、特殊な光を当てると発光する液体を使う発光液調査があります。

散水調査と同様に雨漏りの可能性がある箇所に発光液を流して、浸入経路を調査することができます。

発光液自体は目で見えず、効果も数日でなくなるため建物への影響はありません。

④:サーモグラフィー調査

サーモグラフィー調査は、赤外線カメラを使って雨漏りの箇所を調査する方法です。

雨水が染み込んでいる箇所と、染み込んでいない箇所では温度差が発生します。

温度差をカメラを通して見ることで、雨漏りの原因がどこにあるか推察することができます。

例えば、天井から壁に向かって雨染みがあり、雨水がどこから入ってきているか特定が難しい場合に、屋根や外壁などの温度の違いを可視化して調査が可能です。

サーモグラフィー調査は足場を設置しなくても調査をすることができますが、専門技術と経験が求められる方法です。

以上のような調査方法を用いて瓦屋根の点検は行われます。
では、点検により瓦屋根の状態がわかったところで、どのような状態になっていたら修理すべきなのでしょうか。

瓦屋根を修理すべき目安となる3つの事象

瓦屋根の具体的な修理の目安は以下の3つです。

①:防水紙や谷板金の劣化
②:漆くいの剥がれや崩れ
③:瓦の割れやズレ

それぞれ解説します。

①:防水紙や谷板金の劣化

防水紙には、建物に雨水が浸入するのを防ぐ重要な役割があります。

瓦の割れやズレが起きても防水紙が機能していれば、すぐに雨漏りが発生することはないでしょう。

しかし、防水紙の劣化や損傷が雨漏りの原因にもなるため、定期的にメンテナンスが必要です。

また、屋根には雨水を集める雨どいのような機能を持つ「谷板金」という部分があります。

谷板金は屋根に降った雨を集めて排水してくれるため、水に触れる機会が多くなっています。

全ての屋根に必ずあるとは限りませんが、雨漏りの原因になりやすい部分とも言えます。

いずれも、素人がぱっと見で判断できるものではなく、確認するために屋根に登るのも危険を伴いますので、調査はできるだけ専門の業者に頼むと安心です。

防水紙や谷板金は耐用年数に従い、定期的に修理することがポイントです。耐用年数が分からないの場合は、業者に目安を確認してみると良いでしょう。

②:漆くいの剥がれや崩れ

漆くいは、大棟、隅棟、軒先、壁ぎわの葺き土を、雨風の侵食から防ぐために塗られる防水材です。瓦を接着・固定する重要な役割もあります。

この漆くいは経年劣化するとひび割れが生じ、少しずつ剥がれや崩れが起こります。剥がれや崩れが起こった状態で雨風が当たると、葺き土が流れ出してしまいます。

葺き土は瓦屋根の土台です。
棟が崩れ、崩壊するような大きな被害の原因となる可能性があります。

また、漆くいの剥がれや崩れは浸水の原因にもなり、内部の防水紙や下地にダメージを与えてしまいます。

漆くいの寿命は瓦と比べて短く10年〜20年程度ですが、剥がれや崩れがある場合は年数に関係なく修理を検討しましょう。

③:瓦の割れやズレ

屋根は防水紙で保護されているため、瓦が割れても雨漏りがすぐに発生することは少ないです。

しかし、防水紙の劣化にもつながるので、瓦の割れは早めの修理が必要です。

また、近年では「防災瓦」も普及してきましたが、古い瓦は地震や台風などの影響でズレることがあります。

瓦がズレると隙間から雨水が浸入して、防水紙や下地にダメージを与えてしまいます。

ズレた瓦が後々落下することもあり危険ですので、ズレを直すか、必要であれば瓦の交換を検討しましょう。

以上が、瓦屋根を修理すべき目安となる事象です。

瓦に苔や藻が付いている程度であれば早急な修理は必要ではありませんが、雨漏りや屋根のゆがみがある場合は早めに修理が必要です。

瓦屋根の修理費用を抑えるには定期的な点検が大切

以上、瓦屋根の修理前に知りたい劣化の影響や原因と、点検、修理すべき目安となる事象についてご紹介しました。

専門の業者による定期点検を約20年ごとに行うようにすると、瓦屋根の修理費用を抑えることが可能です。

弊社、株式会社鶴弥は明治20年創業の粘土瓦メーカーです。

新築・リフォーム工事を承る施工店のご紹介もしておりますので、以下の施工事例ページを参考の上、ぜひご相談ください。

施工事例 | 【三州瓦】防災瓦の株式会社鶴弥

寄稿者
ヒトツチ編集部
ヒトツチ編集部
「ヒトツチ」は株式会社 鶴弥が運営するメディアです。古いと思われがちな瓦という建材について、現代の建築家たちがどのように感じ、どのような活用に取り組んでいるのか。寄稿、インタビュー、トークイベントなどの方法で、瓦についての様々な思考を広く共有していきたいと考えています。
「瓦の基礎知識」のカテゴリー内の記事は、瓦メーカー鶴弥と建築設計者の監修のもと制作されています。
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