京都府に建つ『日本庭園のある住宅』は、手入れの止まっていた日本庭園を受け継ぎながら、新たな暮らしの場として再構成された住まいです。設計を手がけたのは、上海と東京を拠点に活動する「 NSDAt(エヌエスディーエーティー) 」。鉄骨造による大きな空間、庭へと抜ける水平性、緑と調和する佇まい。その印象を支える屋根には、鶴弥の瓦「スーパートライ110スマート」が用いられています。海外で大型プロジェクトにも携わるNSDAtは、この住宅でどのように新しい風景をつくり上げたのでしょうか。梅澤豪太郎さんに伺いました。
profile
梅澤 豪太郎
一級建築士。東京理科大学非常勤講師。東京理科大学大学院修了後、アトリエ事務所を経て、梅澤豪太郎一級建築士事務所を設立。2009年よりStudio@に参画し、現在はNSDAtの設立メンバーとして上海・東京を拠点に、東アジアを中心とした建築設計を手がける。
目次
東アジアで培った、場所に寄り添う設計
NSDAtは、上海と東京を拠点に、東アジアを中心として活動する建築設計事務所。多様な文化、歴史、風習を持つ地域において、そこでしか体験できない固有の「場」をつくることを心掛けながら、ホテル、リゾート、商業施設、文化施設など、さまざまな建築を手がけています。
「現在は上海と東京を拠点に連携しながら、東アジアを中心に設計活動をしています。ベトナムでは温泉リゾート施設を手がけたり、中国においても長く仕事をしてきました。国によって設計の範囲や進め方は違いますし、ローカルの設計事務所や設備事務所と組みながら進めることも多いですね」
梅澤さんが海外で活動を始めたのは2008年。中国では北京オリンピック、上海万博へと向かう時期であり、都市が急速に変化していく熱気のなかにありました。
「現在は上海と東京を拠点に連携しながら、東アジアを中心に設計活動をしています。ベトナムでは温泉リゾート施設を手がけたり、中国においても長く仕事をしてきました。国によって設計の範囲や進め方は違いますし、ローカルの設計事務所や設備事務所と組みながら進めることも多いですね」
梅澤さんが海外で活動を始めたのは2008年。中国では北京オリンピック、上海万博へと向かう時期であり、都市が急速に変化していく熱気のなかにありました。
「日本では、ある程度つくりたいものが決まった状態で設計の依頼が来ることが多いと思います。でも当時の中国では、土地や事業はあるけれど、何をつくればいいのかまでは定まっていない、というケースも多かったんです。そこで、こういうものをつくるといいのではないか、という企画の部分から関わることがありました」
建築は、建物だけで完結するものではありません。建て主の思い、土地の条件、地域の歴史、周辺環境、施工の体制。それらを読み解きながら、最適なかたちを探っていく。その姿勢は、NSDAtが掲げる「そこでしか体験できない固有の場」をつくるという考え方にも通じています。 今回取り上げる『日本庭園のある住宅』もまた、そうした姿勢から生まれた建築です。新しい住宅をつくるうえで手がかりとなったのは、その土地に残されていた日本庭園でした。
建築は、建物だけで完結するものではありません。建て主の思い、土地の条件、地域の歴史、周辺環境、施工の体制。それらを読み解きながら、最適なかたちを探っていく。その姿勢は、NSDAtが掲げる「そこでしか体験できない固有の場」をつくるという考え方にも通じています。 今回取り上げる『日本庭園のある住宅』もまた、そうした姿勢から生まれた建築です。新しい住宅をつくるうえで手がかりとなったのは、その土地に残されていた日本庭園でした。
受け継がれていた日本庭園から始まった住宅

『日本庭園のある住宅』は、京都府内に建つ戸建住宅。約4,000㎡の敷地面積に建てた鉄骨造の地上2階建てで、延床面積は約870㎡。一般的な住宅のスケールを大きく超えた、ゆとりある計画でした。
「高い生垣や樹木に囲まれた敷地には、長く手入れが行き届いていなかった日本庭園が残されて、古い木造2階建ての家屋が庭に対応する形で建っていました。その残された住宅を解体し、新たに設計したのですが、基本的には既存の建物と近い配置になりました」
敷地は十分に広いものの、建築のボリュームを大きくすればよいわけではありません。庭の眺め、周囲の緑、既存の石や植栽との距離感。さらに、京都という土地における景観上の制約もあったといいます。
「建て主からは床面積をもっと増やしたいという話もありましたが、周りの緑や環境との関係を考えると、ここがぎりぎりだろうと。庭との関係性をかなり意識しながら、できるだけ居住空間を広く、しかし外からは大きく見えないように。設計を多面的に考えていく必要がありました」
大きな建築を、大きく見せない。古い庭を単に保存するのではなく、新しい暮らしの中で生かす。そのふたつの課題が、この住宅の骨格を形づくっていきました。
「高い生垣や樹木に囲まれた敷地には、長く手入れが行き届いていなかった日本庭園が残されて、古い木造2階建ての家屋が庭に対応する形で建っていました。その残された住宅を解体し、新たに設計したのですが、基本的には既存の建物と近い配置になりました」
敷地は十分に広いものの、建築のボリュームを大きくすればよいわけではありません。庭の眺め、周囲の緑、既存の石や植栽との距離感。さらに、京都という土地における景観上の制約もあったといいます。
「建て主からは床面積をもっと増やしたいという話もありましたが、周りの緑や環境との関係を考えると、ここがぎりぎりだろうと。庭との関係性をかなり意識しながら、できるだけ居住空間を広く、しかし外からは大きく見えないように。設計を多面的に考えていく必要がありました」
大きな建築を、大きく見せない。古い庭を単に保存するのではなく、新しい暮らしの中で生かす。そのふたつの課題が、この住宅の骨格を形づくっていきました。
庭を“残す”のではなく、“生かす”
この住宅では、既存の日本庭園を生かしながらも、新たなランドスケープデザインが行われています。日本庭園は建築の印象を大きく引き立てる存在でありながら、それ単体が主役というわけではありません。建築の中に複数の庭を挿入し、それぞれに異なる役割を与えることで、住まい全体が外部空間と呼応する構成となっています。
「新しい建築のなかには、玄関ホールのアイキャッチとなる『松の中庭』、ダイニングテラスとつながる『芝生の庭』、車の乗り入れも可能な『前庭』、既存の高木帯との間に設けられた『木陰の庭』、そして機能的な『裏庭』を設計しました。日本庭園だけでは一面にしかならないので、それ以外の場所にも外部を挟み込んでいくことを考えた結果です。広いからこそ、性格の違う庭をつくることができたと思います」
庭は、鑑賞のための対象であると同時に、光や風を室内へ導く装置でもあります。玄関に入ったときに見える庭、ダイニングから続く庭、木陰でくつろぐ庭、車寄せとつながる庭。住まいの機能と庭の性格が結びつくことで、暮らしの場は外部空間とゆるやかにつながっていきました。
庭は、鑑賞のための対象であると同時に、光や風を室内へ導く装置でもあります。玄関に入ったときに見える庭、ダイニングから続く庭、木陰でくつろぐ庭、車寄せとつながる庭。住まいの機能と庭の性格が結びつくことで、暮らしの場は外部空間とゆるやかにつながっていきました。

「既存の石、石灯籠、手水鉢なども、それぞれの庭へ再配置しました。古いものをそのまま一箇所に残すのではなく、新しい庭の中で役割を与え直す。例えば、既存の大きな手水鉢は鎖樋と組み合わせられ、雨水を受ける要素として新たな景観をつくっています。即興的な要素と計画的な要素が混ざっているというか、時間をかけたからこそできた部分もあると思いますね」
古い庭をそのまま保存するのではなく、今の住宅の中で再び動かしていく。そこに、この建築の大きな魅力があります。
古い庭をそのまま保存するのではなく、今の住宅の中で再び動かしていく。そこに、この建築の大きな魅力があります。
景観と一体になるための大きな建築
一方で、この住宅にはもうひとつの課題がありました。それは、建て主が求める大きなスケール感と、庭や景観に対する抑制をどう両立させるかということです。
「敷地に対して求められた建物はかなり大きく、2階建てではありますが、高さもできるだけ贅沢に使いたいという要望がありました。京都の風致地区では高さ10m以下という制限がありますが、計画ではその範囲を最大限に使っています。ただ、庭との関係を考えると、そのボリュームをそのまま大きく見せるわけにはいきません。そこで、水平方向にできるだけ視線が抜けるような構成を意識しました」
「敷地に対して求められた建物はかなり大きく、2階建てではありますが、高さもできるだけ贅沢に使いたいという要望がありました。京都の風致地区では高さ10m以下という制限がありますが、計画ではその範囲を最大限に使っています。ただ、庭との関係を考えると、そのボリュームをそのまま大きく見せるわけにはいきません。そこで、水平方向にできるだけ視線が抜けるような構成を意識しました」

そこで採用されたのが、大きな3枚の切妻屋根によって構成される建築です。構造は鉄骨造。大きな空間や高い天井を実現しながらも、屋根のラインを水平に整えることで、庭の中に低く、静かに構えるような佇まいをつくっています。
「構造としては現代的ですが、目指したのは日本建築が持つ、低く、深く、横へ広がっていく感覚でした。高さを確保しながらも、建物の重心を下げて見せる。そのために、屋根の形や厚み、軒の出、色の見え方まで細かく検討しました。すべてを木造でつくるわけではありませんが、木造建築で培われてきた質感や納まりの考え方は意識しています」
屋根は、外から見るだけのものではありません。2階の部屋から下屋の屋根が見える。玄関から庭越しに屋根の先端が見える。鎖樋を伝って水が落ちる。そうした場面の積み重ねによって、屋根は暮らしの目線に近い存在として現れます。
「部屋から屋根が見えるという状態がおもしろいし、望ましいと考えていました。屋根の見え方が、庭との関係や建物全体の印象に大きく関わってくるんです。特にこだわったのが、2階のテラスから見たときの屋根の見え方でした。一般的な納まりであれば、腰壁のような壁を立てて処理する方法もありますが、それでは屋根の純粋な形が失われてしまう。そこでガラス手すりを設けて、屋根そのものの美しさと景観との調和を両立させました」
「構造としては現代的ですが、目指したのは日本建築が持つ、低く、深く、横へ広がっていく感覚でした。高さを確保しながらも、建物の重心を下げて見せる。そのために、屋根の形や厚み、軒の出、色の見え方まで細かく検討しました。すべてを木造でつくるわけではありませんが、木造建築で培われてきた質感や納まりの考え方は意識しています」
屋根は、外から見るだけのものではありません。2階の部屋から下屋の屋根が見える。玄関から庭越しに屋根の先端が見える。鎖樋を伝って水が落ちる。そうした場面の積み重ねによって、屋根は暮らしの目線に近い存在として現れます。
「部屋から屋根が見えるという状態がおもしろいし、望ましいと考えていました。屋根の見え方が、庭との関係や建物全体の印象に大きく関わってくるんです。特にこだわったのが、2階のテラスから見たときの屋根の見え方でした。一般的な納まりであれば、腰壁のような壁を立てて処理する方法もありますが、それでは屋根の純粋な形が失われてしまう。そこでガラス手すりを設けて、屋根そのものの美しさと景観との調和を両立させました」

「屋根を壁にぶつけてしまうと、内側から見たときの印象がまるで違うものになりますし、純粋に屋根だけが見えるようにしたかったんです。もちろん清掃やメンテナンスの必要はありますが、建て主の要望を踏まえて、今回は美しさを優先しました」
大きな住宅でありながら、威圧的に見せない。そのための知恵が、屋根の形や視線の抜け、素材の選び方に込められています。
大きな住宅でありながら、威圧的に見せない。そのための知恵が、屋根の形や視線の抜け、素材の選び方に込められています。
瓦が決める、建築の重心と質感
この住宅において、屋根は単なる雨仕舞いのための要素ではありません。庭との関係、建物の重心、水平性、そして風景の中での佇まいを決定づける重要な部分です。
建物の屋根は大きく、軒の出は最大で約2.5mにも及びます。深い軒は、庭に対して建物を低く構えさせると同時に、室内外をゆるやかにつなぐ役割を果たします。
「屋根の出が大きいので、それを支える鉄骨も大きくなってきます。そこで屋根の厚みをどう使いながら、どう薄く見せるか。使う素材の色や厚み、反射の仕方によっては、存在感が強く出すぎてしまう可能性もあるので、瓦の色や質感はかなり意識しました」
瓦の選択は、単なる素材選びではなく、建築の重心や風景の中での見え方を調整するための判断でもありました。 実際にこの住宅では、和風表現が求められるなかで、漆喰、焼杉板、瓦といった素材が選ばれています。ただし、それは単に「和風らしく見せる」ためではありません。素材が持つ厚みや陰影を生かしながら、鉄骨造による現代的な建築にどう馴染ませるか。その点が重視されたといいます。
「瓦って、一枚一枚を焼いてつくって、それを組み合わせていく素材ですよね。工業製品としての精度はありながら、焼き物ならではの質感もある。そのわずかな陰影や光の受け方が、大きな屋根面に落ち着きを与えてくれる。今回の住宅では、瓦が古典的になりすぎず、新しさと古さのあいだに建物を留めてくれているように感じています」
建物の屋根は大きく、軒の出は最大で約2.5mにも及びます。深い軒は、庭に対して建物を低く構えさせると同時に、室内外をゆるやかにつなぐ役割を果たします。
「屋根の出が大きいので、それを支える鉄骨も大きくなってきます。そこで屋根の厚みをどう使いながら、どう薄く見せるか。使う素材の色や厚み、反射の仕方によっては、存在感が強く出すぎてしまう可能性もあるので、瓦の色や質感はかなり意識しました」
瓦の選択は、単なる素材選びではなく、建築の重心や風景の中での見え方を調整するための判断でもありました。 実際にこの住宅では、和風表現が求められるなかで、漆喰、焼杉板、瓦といった素材が選ばれています。ただし、それは単に「和風らしく見せる」ためではありません。素材が持つ厚みや陰影を生かしながら、鉄骨造による現代的な建築にどう馴染ませるか。その点が重視されたといいます。
「瓦って、一枚一枚を焼いてつくって、それを組み合わせていく素材ですよね。工業製品としての精度はありながら、焼き物ならではの質感もある。そのわずかな陰影や光の受け方が、大きな屋根面に落ち着きを与えてくれる。今回の住宅では、瓦が古典的になりすぎず、新しさと古さのあいだに建物を留めてくれているように感じています」
鶴弥の「スーパートライ110スマート」にたどり着いた理由

屋根材を選ぶにあたり、梅澤さんたちは複数の瓦を検討しました。建物のスケール、屋根の見え方、庭や周囲の環境との関係を踏まえながら、最もふさわしいものを探っていったといいます。
「何社か見ていて、イメージとしては平板瓦が合うのではないかと考えていました。比較したときの細かな決め手までは正直はっきり覚えていないのですが、単純に言うと、いちばんしっくりきたのが鶴弥さんの製品でした」
選ばれたのは、鶴弥の「スーパートライ110 スマート」。直線的でフラットな形状を持つ平板瓦であり、屋根面と一体となるすっきりとした表情が特徴の製品です。伝統的な瓦屋根の印象を強く打ち出すのではなく、現代的な建築にも自然に馴染む佇まいが、この住宅には合っていました。
「設計段階では、実物のサンプルを取り寄せて確認しました。瓦は光の当たり方や見る角度によって、色の見え方がかなり変わります。今回は屋根そのものが室内外から見える建築なので、その表情の変化も含めて検討しました」
大きな屋根面を持つ建築では、瓦一枚一枚の凹凸が強すぎると、屋根の印象が主張しすぎてしまいます。一方で、表情が平板すぎる素材では、庭や焼杉、漆喰が持つ質感と響き合いにくい。その点でスーパートライ110スマートは、ほどよい陰影とフラットさを併せ持つ存在でした。
「基本的には鶴弥の標準のものを使っています。特殊な納め方ではありませんし、特別な部材も入れていません。製品として形がきれいで、整っているんです。地元の業者さんも、特に大きな問題なく施工できたと思います」
スーパートライ110スマートは、この住宅の中で強く主張する素材ではありません。むしろ、屋根面全体を静かに整え、庭や建築の佇まいを支える存在として機能しています。
「何社か見ていて、イメージとしては平板瓦が合うのではないかと考えていました。比較したときの細かな決め手までは正直はっきり覚えていないのですが、単純に言うと、いちばんしっくりきたのが鶴弥さんの製品でした」
選ばれたのは、鶴弥の「スーパートライ110 スマート」。直線的でフラットな形状を持つ平板瓦であり、屋根面と一体となるすっきりとした表情が特徴の製品です。伝統的な瓦屋根の印象を強く打ち出すのではなく、現代的な建築にも自然に馴染む佇まいが、この住宅には合っていました。
「設計段階では、実物のサンプルを取り寄せて確認しました。瓦は光の当たり方や見る角度によって、色の見え方がかなり変わります。今回は屋根そのものが室内外から見える建築なので、その表情の変化も含めて検討しました」
大きな屋根面を持つ建築では、瓦一枚一枚の凹凸が強すぎると、屋根の印象が主張しすぎてしまいます。一方で、表情が平板すぎる素材では、庭や焼杉、漆喰が持つ質感と響き合いにくい。その点でスーパートライ110スマートは、ほどよい陰影とフラットさを併せ持つ存在でした。
「基本的には鶴弥の標準のものを使っています。特殊な納め方ではありませんし、特別な部材も入れていません。製品として形がきれいで、整っているんです。地元の業者さんも、特に大きな問題なく施工できたと思います」
スーパートライ110スマートは、この住宅の中で強く主張する素材ではありません。むしろ、屋根面全体を静かに整え、庭や建築の佇まいを支える存在として機能しています。
屋根がつくる、庭との新しい風景
『日本庭園のある住宅』では、屋根と庭の関係が随所に表れています。北側のエントランスからは、ガラスのボックス越しに庭へ視線が抜け、2階へ上がると、下屋の瓦屋根が視界に入り、その先に緑が重なる。さらに玄関ホールには、アイキャッチとして松の中庭が設けられ、室内に入った瞬間から外部の気配を感じられる構成となっています。
「エントランスから見たときに、奥に日本庭園が見えてくる。その手前に松の中庭もあって、視線がいくつかの庭を通りながら抜けていくような感覚があります。室内にいながら、常に外部との関係を感じられるようにしたかったんです」
この住宅は、古い日本庭園を残した建築ではありません。庭を読み替え、石を置き直し、新しい庭を挿入し、鉄骨造の大きな空間をつくりながら、それでもなお、場所の記憶から離れないように計画されています。その結節点のひとつに、瓦の屋根がありました。
「一個一個が焼いてあって、それを組み合わせていく。瓦という建材の性質や質感は、やはり他のものではなかなか出せないものだと思います」
瓦は、和風の記号としてだけ使われる素材ではありません。建築の中でどう使うかによって、風景への馴染み方も、屋根の見え方も、空間の重心も変わっていきます。深い軒の下に静かに連なる瓦は、古き庭を受け継ぐこの住宅に、確かな重心と、時間を受け止める表情を与えています。
こうした細部へのまなざしは、梅澤さんたちの今後の仕事にもつながっていきます。 「国によって、設計の業務範囲や関わり方はかなり違います。日本では今回のように、素材や納まりまで細かく考えられる仕事がある。一方で、中国やベトナムでは、また違うスケールのプロジェクトに関わることができます。今はその違いを楽しんでいますが、海外の仕事でも、もう少し細部まで踏み込んでいけたら、さらに面白い建築ができるのではないかと思っています」
大きな構想を描きながら、瓦一枚の見え方にまで目を凝らす。『日本庭園のある住宅』は、NSDAtが培ってきた国際的な経験と、日本の風景に向き合う繊細な設計が交差する住まいとして、京都の庭に静かに佇んでいます。
「エントランスから見たときに、奥に日本庭園が見えてくる。その手前に松の中庭もあって、視線がいくつかの庭を通りながら抜けていくような感覚があります。室内にいながら、常に外部との関係を感じられるようにしたかったんです」
この住宅は、古い日本庭園を残した建築ではありません。庭を読み替え、石を置き直し、新しい庭を挿入し、鉄骨造の大きな空間をつくりながら、それでもなお、場所の記憶から離れないように計画されています。その結節点のひとつに、瓦の屋根がありました。
「一個一個が焼いてあって、それを組み合わせていく。瓦という建材の性質や質感は、やはり他のものではなかなか出せないものだと思います」
瓦は、和風の記号としてだけ使われる素材ではありません。建築の中でどう使うかによって、風景への馴染み方も、屋根の見え方も、空間の重心も変わっていきます。深い軒の下に静かに連なる瓦は、古き庭を受け継ぐこの住宅に、確かな重心と、時間を受け止める表情を与えています。
こうした細部へのまなざしは、梅澤さんたちの今後の仕事にもつながっていきます。 「国によって、設計の業務範囲や関わり方はかなり違います。日本では今回のように、素材や納まりまで細かく考えられる仕事がある。一方で、中国やベトナムでは、また違うスケールのプロジェクトに関わることができます。今はその違いを楽しんでいますが、海外の仕事でも、もう少し細部まで踏み込んでいけたら、さらに面白い建築ができるのではないかと思っています」
大きな構想を描きながら、瓦一枚の見え方にまで目を凝らす。『日本庭園のある住宅』は、NSDAtが培ってきた国際的な経験と、日本の風景に向き合う繊細な設計が交差する住まいとして、京都の庭に静かに佇んでいます。
文:中澤 範龍 写真:傍島利浩

